腰のヘルニアの原因や症状、手術は?正しい基礎知識
こんにちは。神戸市垂水区のokada鍼灸整骨院の岡田です。
さて、前回のブログでは腰のヘルニアで歩けないほどお困りだった患者さんの改善ストーリーをご紹介しました。(まだご覧になっていないかたは下のリンクからどうぞ)
せっかくですので、この度は腰のヘルニア (腰部椎間板ヘルニア)について「正しい基礎知識」をもう少しくわしく、そして「自宅でできるケア」を2回シリーズでお届けします。
つい先週も太ももや足の痛み、いわゆる坐骨神経痛にお悩みで通院されている患者さんから
「先生、この痛み、僕はヘルニアなんでしょうか…?」
というご質問がありました。
よくよくお話を聞いてみると、坐骨神経痛自体はその時点で3分の一くらいになっていたものの「ヘルニア」に対して必要以上に恐怖心を抱いておられるようでした。
これって前回ご紹介したYさんと同じような不安・疑問ですよね。
患者さんとの会話で腰のヘルニアの話題はときどき出てきますが、ヘルニアについて「正しく理解」しているかたはあまりおられないように感じます。
ただでさえ太ももや足の痛みで大変な中、もしかしたらヘルニアへの誤解が元で悩んでしまっているかたが沢山おられるかも知れません。
ですので、今日は皆さんが知らない「腰のヘルニアの意外な真実」もふくめた正しい基礎知識をご紹介したいと思います。
もしあなたが
・過去に腰のヘルニアをしている
・現在、腰のヘルニアと診断され治療中だけど効果がない
・まだ病院で検査はしていないけど腰のヘルニアなのか心配
このようなことに当てはまるなら、今回の記事を読んでおいて損はありません。
ぜひ最後までご覧いただき腰のヘルニアを正しく理解して、対処法に取り組んでください。
そもそも腰のヘルニア(椎間板ヘルニア)とは?原因と症状
まず、ひとの背骨(椎骨・椎体=ついこつ・ついたい)の一つひとつの間にはクッションのような役割をする「椎間板:ついかんばん」があります。
この椎間板が色々な原因でその形が崩れて飛び出し、近くに通る神経を圧迫することでさまざまな症状を引き起こすものが椎間板ヘルニアなのです。
ちなみにラテン語である「ヘルニア」とは体の臓器などがあるべき位置から「飛び出す・脱け出た」状態のことを言います。つまり、厳密に言えばヘルニア=椎間板ヘルニアという訳ではなく、腰のヘルニア(椎間板ヘルニア)は臍ヘルニア(出べそ)や脱腸のように「ヘルニア」というカテゴリーの中の一つの病気なのです。
背骨は首に7個(頚椎=けいつい)その下、背中の部分が12個(胸椎=きょうつい)腰の部分の5個(腰椎=ようつい)あり、つまり腰のヘルニア=「腰部椎間板ヘルニア」という訳です。
腰のヘルニアの原因と症状
腰の椎間板ヘルニアは下の写真のように本来は弾力性のある椎間板が変性、飛び出して神経を圧迫している状態です。
その原因はさまざまで「加齢によるもの」「重労働やスポーツでの負担」「遺伝的要素(体質)」「運動不足」「喫煙」などがあります。
症状としては
・腰や太もも、足の痛み(坐骨神経痛)
・太ももや足のしびれ(感覚異常)
・足に力が入りにくい(筋肉の弱化やマヒ)
・おしっこ、便の異常(膀胱、直腸障害:ぼうこう・ちょくちょうしょうがい)
などがあり、よく見られる症状は腰痛や坐骨神経痛です。
しびれがある場合、その場所の肌を触っても感覚が鈍く「何だか服の上から触れているような感じ」=膜状感(まくじょうかん)が出ることがあります。
腰のヘルニアの種類・タイプ
腰部椎間板ヘルニアには片方の足に症状が出る「神経根型=しんけいこんがた」と両足に症状が出て比較的重症化しやすい「馬尾型=ばびがた」という2種類のタイプがあります。
また腰椎は5つあるのですが、どの高さでヘルニアが出るかで現れる痛みやしびれの「場所」が変わってきます。
例えば多く発生する4番5番(下部)では足の主に外側が、それよりも上の部分で発生すると足の前側に症状が出てくるわけです。
腰のヘルニアには手術?意外な事実
さて、今までお伝えしたのは腰部椎間板ヘルニアの簡単な概要でした。もしかしたらご存知であったかたも多くおられるかもしれません。
ここからはあまり知られていないヘルニアの「意外な事実」についてお話します。
腰のヘルニアの意外な3つの真実
① その痛み、腰のヘルニアが原因とは限りません
② ほとんどは手術の心配なし。ご安心ください
③ 実は健康なひとでも腰のヘルニアをもっています
おそらく皆さんが椎間板ヘルニアを恐がる背景には「ヘルニア=手術をしなければならない」という思い込みからきていることが多いように感じます。
ですがご安心ください。
「腰椎椎間板ヘルニアガイドライン」の新しいデータ(2005年)によれば年間の手術件数、つまり外科的な治療が必要であったのはヘルニアと診断されたひとのたった5%なのです。
腰のヘルニアの有病率(ヘルニアをもっている確率)は人口に対して1%。年間の手術件数は人口10万人に対して46.3人です。有病率が1%なわけですから単純計算で人口10万人ならヘルニアのかたが1000人、その内年間で手術が必要だったのが46.3人。(1000分の46.3=4.63%)
正確に大規模な測定ができているわけではありませんが、多めに見積もってもかなり限定された確率であることには変わりありません。
確かに筋肉の強いマヒ(足に力が入らない)、痛みがあまりに強い(生活全般が痛みでままならない)、膀胱・直腸障害がある場合などは手術適応になります。
ですが「腰部椎間板ヘルニア」と一口に言っても症状の度合いはピンからキリまであり、改善に必要な時間の個人差はありますがほとんどが自然に回復していくのです。
そして、そもそもその症状は本当にヘルニアからきているのか?という疑問もあります。
どういうことかと言いますとこれも新しい研究結果でCTやMRIで確認したところ「健常者にも7割以上に椎間板ヘルニアが見つかった」というのです。
海外での新しい研究では「椎間板ヘルニアの患者46名と環境・年齢の似た健常者46名を比較検討した結果、健常者にもヘルニアが76%見つかった」という論文も存在し、
また、下のように日本でもヘルニア有りで症状は無しという事例がすでに常識的になってきています。
~画像上の「腰椎椎間板ヘルニア」は多くの無症状の成人にみられる所見である.MRIをはじめとした高度医療装置の普及でわれわれ治療者はこうした無症状腰椎椎間板ヘルニアを目にすることが珍しくなくなった~
※腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインから引用
腰のヘルニア=痛みの原因とは限らない
おかしいですよね?本当に腰のヘルニアが痛み・しびれの原因ならこんなことは起こらないはずです。
これは何故なのかというと、実は上で書いたような坐骨神経痛やしびれは腰のヘルニア以外にも「筋肉」や「関節」の原因で起こるものが沢山あるからなのです。
筋肉の問題は「トリガーポイント」関節の問題は「仙腸関節障害」などがあり、これらは医療の世界ではずいぶん前から知られています。
筋肉や関節の問題、つまりは当然ながら整体治療で効果が期待できるということ。
私の治療歴21年の経験上で言うなら、こういったヘルニア以外の原因で坐骨神経痛やしびれが出ていることのほうがむしろ多いのです。
以上、今回はやや専門的なことを長々とお話してきましたが、
これらの事実から、
「たとえ病院で腰のヘルニアと診断されても、すぐに手術を連想して恐がることはない」
ということが分かってもらえたでしょうか。
まとめ
・必ずしも腰のヘルニアが原因で症状が出ているわけではない
・むしろヘルニア以外の原因であることが沢山ある
・本当に手術が必要なのはごくわずかで、ほとんどは安心して良い
最後にもう一つだけ
もしあなたが町の整形外科でレントゲンと簡単な問診だけで「ヘルニアです」と言われている場合、その信用性は残念ながら決して高いものではありません。
なぜならレントゲンでは骨の状態しか分かりませんし、本当にヘルニアが原因かどうかを見極めるにはMRIや神経学的な検査(脚気=かっけの検査のように器具でポンポン叩くもの)が必ず必要になるからです。
ですから、もしあなたが「どうしても自分にヘルニアがあるかどうか知りたい」と思っているならMRI撮影ができる大きい病院で背骨専門のお医者さん(脊椎脊髄専門医)がおられるところに受診されることをおすすめします。
いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した内容はご存じないかたが大多数だと思います。
次回は「すぐに恐がらんでも良いことは分かった。でも何か少しでも楽になる方法や予防法はないの?」というかたに向けて腰のヘルニアへの対処法をご紹介いたします。
ぜひ次も合わせてご覧ください。
(監修:柔道整復師・はり師・きゅう師 岡田英士)