整体に科学的根拠ってあるの?整体治療のホントのところ

こんにちは。神戸市垂水区、okada鍼灸整骨院の岡田です。
今回は、「整体治療の科学的根拠」について、最新のデータや、治療歴24年(2025年現在)の立場からお話していこうと思います。
先日は「整体治療や鍼灸って何だか怪しい?その起源や効果についてのお話(整体編)」で、整体の起源や、日本での現状について、記事を書かせていただきました。
その記事に対して、
- 「整体の効果って科学的にどうなの?」
- 「ネットだと整体は“非科学的”とか“エビデンスがない”って言われているけど本当?」
というご質問やご意見も多くいただきました。
今やネットやSNSには数えきれないほど整体の広告や情報があふれています。「私も受けてみたい!」という方もいれば、逆に「何だか信用できない…」と感じている方も少なくないと思います。
今回は、そんな疑問や誤解が色々と出やすい、整体治療の「ホントのところ」を、科学的根拠・臨床研究の視点から、できるだけ分かりやすく解説していきます。
整体は“科学的データ化が難しい”という宿命がある

結論から言うと、整体という治療法の特性そのものが「研究に不向きな側面」を持っているのです。なぜ整体の科学的根拠が出にくかったのか、その背景を少し掘り下げてみましょう。
理由1:整体はもともと経験医学
以前の記事でもお話しましたが、古くから存在していた日本の整体(広義の手技療法)は、もともと、先人たちの“経験医学”として発展してきたものです。
つまり、
- 「この動きをすると身体が軽くなる」
- 「この部位をこう触ると痛みが和らぐ」
といった、長い長い年月をかけて、現場の観察と経験の積み重ねから体系化されてきた治療法なのです。
ただ、江戸中期に蘭学の「解体新書(解剖学書)」が入ってくるまでも、柔術や剣術などの武術の中で、身体構造に対する実践的な解剖の理解はある程度あったと考えられます。
そのため、昔は「理論」よりも「感覚」や「コツ」が重視され、その門下の高弟など、限られた人間にのみ、**口伝(くでん)**で技が伝えられていました。
結果として文献も少なく、流派によって手法もバラバラに発展していった背景がありますので、「これが整体だ」と手法を統一してデータをとることが難しいのです。
理由2:鍼灸に比べ研究条件の定量化が難しい
たとえば、鍼灸治療であれば、「どのツボに」「どの深さで」「どれくらいの刺激量(鍼の太さや鍼をしている時間)で」というように、施術の条件を一定にしやすい特徴があります。
そのため、研究デザインを組みやすく、科学的なデータが出しやすい分野なのです。
一方、整体(手技療法)は、「体のどの場所を」「どの角度・方向で」「どんな圧・スピードで」といった施術の条件が、治療家の“手”という極めて個人的な感覚に依存しています。
つまり、同じ手技を別の治療家が行っても、場合によっては、全く内容が変わってしまうため、「再現性の高い研究設計」が非常に難しいという現実があるのです。
これが、整体の分野で科学的エビデンスが出にくかった最大の理由です。
それでも科学的根拠は少しずつ積み上がっている

では、整体には科学的な裏付けがまったくないのか?
もちろんそんなことはありません。
近年は
- 解剖学の進歩
- 動作科学(バイオメカニクス)の発展
- 臨床研究の増加
などによって、整体の有効性に関する科学的根拠が、少しずつ、着実に積み上がってきているのです。
根拠1、解剖学や動作科学の進歩が整体理論を裏付け
まず大きいのは、現代解剖学・動作科学・筋膜研究などの進歩です。
かつて、古くから整体で言われてきた
- 「全身のつながり」
- 「骨盤のゆがみが肩こりに影響する」
- 「足首のズレが腰痛につながる」
といった考え方は、西洋医学側から「単なる経験則で、非科学的」と見なされていました。
しかし、現在では、関節のわずかなズレ(位置異常や動きのかたより)、つまりゆがみが、周囲の筋肉の緊張を生んだり、痛みにつながることは、すでに解剖学や生理学の分野で明らかとなっており、
また、近年注目されはじめた**筋膜(ファシア)**という全身の組織が、皮膚、筋肉、内臓、神経など、すべてを“つなげている”ことが科学的に証明され、
さらに「運動連鎖:うんどうれんさ」→人間の動きは、体の各部分が連動し、お互いに影響しながら行われている、という運動科学(バイオメカニクス)の考え方が、今や常識になりつつあります。
つまり、整体の観点で重視されてきた「ゆがみ」や「全身の連動性」には科学的な合理性があるということが、最新の解剖学によって裏付けられ始めているのです。
根拠2、臨床研究からのエビデンスも増加中
さらに重要なのは、臨床研究の進歩です。
特に欧米では整体(手技療法)に関する臨床研究が活発で、システマティックレビュー(エビデンスレベル1)やメタアナリシスという、最上位の科学的評価でも以下のような結果が報告されています:
- 慢性腰痛に対する徒手療法(整体・カイロプラクティック)は有効
(2018年 JAMA誌掲載レビュー※1) - 頸部痛・肩こりに対する手技療法の有効性
(BMJ誌・米国理学療法学会によるメタアナシス※2) - 頭痛(緊張型頭痛・片頭痛)に対する徒手療法の補助的有効性
(英国Cochraneデータベース※3)
※1リンク:Association of Spinal Manipulative Therapy With Clinical Benefit and Harm for Acute Low Back Pain
※3リンク:Manual therapies for primary chronic headaches: a systematic review of randomized controlled trials
つまり、整体が万能とまでは言えないものの、慢性的な痛みや、体の機能の障害に対して、一定の効果があることが、国際的な臨床研究で確認されつつあるのです。
整体は万能ではないが“選択肢の一つ”
として非常に有望

誤解のないようにお伝えすると、整体は決して**「魔法の治療」**ではありません。たしかに、時として劇的な効果が出ることもありますが、
- 癌や感染症は治せません
- 骨や関節の変形そのものも治すことはできません
- 精神疾患も専門医の領域です
※ただ、上記に付随する症状へは治療できることもあります
ですが、慢性的な
- 肩こり、腰痛、頭痛など、筋肉や関節にかかわる不調
- 長引く疲労感や自律神経の乱れ
- 五十肩など関節の可動域制限
などに対しては、非常に高いポテンシャルを秘めています。
実際、長年医療機関を回っても改善しなかった方が、整体で「体のバランス」や「筋肉や関節の動作パターン」を整えることで「こんなに楽になるとは思わなかった」と喜んでもらえるケースも少なくありません。
不調にお悩みなら、ぜひ整体治療を“選択肢の一つ”に

もし、今この記事を読んでいるあなたが
- 長引く不調に悩んでいる
- 病院では異常なしと言われたがつらい
- 自然な方法で身体を整えたい
と感じているなら、整体治療は十分に選択肢のひとつとして考える価値があります。
もちろん、治療家の技量には先生によって大きな差があると思います。実際、近年ではSNSで誰でも自由に発信できるので、整体に関わる発信の中には、医学的にみて、明らかに誇張されたものや、勉強不足である内容も散見されます。
ですが、
- 少なくとも10年以上の治療経験+今も勉強を続けていて
- HPやSNSなどで極端なあおり表現や過剰なアピールを「していない」
- 真面目で、あなたの話をしっかり聞いてくれる先生
のもとで受ける整体は、きっとあなたの体に新しい可能性を開いてくれるはずです。
さいごに
今回は、「整体の科学的根拠ってあるの?」というテーマで、整体の歴史・科学的裏付け・最新の研究状況についてお話ししました。
要点をまとめると、
- 整体は経験医学のため今まで科学的研究が難しかった
- しかし近年は解剖学や運動科学の進歩により科学的裏付けが出てきた
- 臨床研究的でも慢性的な不調に対して有効な選択肢と認められつつある
整体に対する正しい理解が少しでも広まり、整体治療の恩恵を受ける方が増えてくれることを、私自身、心から願っています。
今後も、こうした整体や鍼灸治療の「正しい情報」を発信し続けていきたいと思います。
良ければぜひ、他の記事も参考にしてみてください。
(監修:柔道整復師・はり師・きゅう師 岡田英士)