鍼灸治療や整体って何だか怪しい?その歴史や効果についてのお話(鍼灸編)



こんにちは。神戸市垂水区のokada鍼灸整骨院の岡田です。


今回は、「鍼灸治療ってちょっと怪しくない?」「本当に効果あるの?」と感じている方に向けて、あらためて鍼灸の歴史・科学的根拠・実際の可能性について、お話していきます。


「超」がつくほどの情報化社会の今、SNSやネットでは、鍼灸治療に関わる広告や動画は数えきれないほど出回っていますが、「アピール色が強過ぎて信用できない」「何だか胡散臭い」と感じる方もおられるのではないでしょうか?


実際、当院でも、長年の不調を改善された患者さんから「実は、楽になった今だから言えますが、知り合いから先生の所を紹介された時は、正直、鍼とか整体ってよく分からないし、ホントに効果があるのかなって思ってたんですよ」という本音のお声が度々ありました。


鍼治療を定期的に受けていたり、効果を感じて満足している方は、たくさんおられるはずですが、人口全体から見ればまだまだ少数派なのが現状だと思います。


普段の治療中は目の前の患者さんに集中しているため、今日のようなお話しはなかなかする機会がありません。そこで今回は、改めて「鍼灸治療って何なの?」という疑問に、歴史・科学・可能性の3つの視点から、プロとしてお話ししてみようと思います。



鍼灸が「よく分からない」「怪しい」と思われがちなのは、「気」「経絡」「陰陽」といった、日常生活では馴染みのない東洋医学の概念が関係しているのかもしれません。


ですが、実は鍼灸は日本でも長い歴史を持ち、かつては「正式な医療」として根付いていたのをご存じでしょうか?


1、日本最古の医学書『医心方』を書いたのは、当時の“鍼医”


日本における鍼灸の歴史は、千年以上も前にさかのぼります。


10世紀の平安時代、**日本最古の医学書とされる『医心方(いしんぽう)』**全30巻が編集されました。この書物を編纂したのが「丹波康頼(たんばのやすより)」という当時の宮廷医(天皇や王侯貴族などを診察する医師)であり、彼自身も鍼や灸を用いて治療を行う“鍼医”でした。


当時、鍼灸は漢方医学の一部として体系的に学ばれ、貴族や武士階級に対しても正式な治療手段として使われていたのです。


日本が舞台ではありませんが、朝鮮王朝時代に実在した女性医官がモデルとなった2003年の韓国歴史ドラマ「チャングム」でも、当時、鍼灸治療がスタンダードな医学であったことがうかがえます。


2、明治時代、それまで地域医療を支えていた漢方・鍼治療が弾圧される


ところが、明治維新を境に日本の医療は大きく変わります。


「近代化」の名のもとに、当時の政府はドイツ医学(西洋医学)を主軸に据え、漢方や鍼灸を“非科学的”として排除しようとしたのです。


これにより、それまで地域の健康を支えていた鍼医や漢方医たちは制度的に職を奪われ、その多くが姿を消していきました。


この時期の“否定的なイメージ”が、今もなお、鍼灸治療への疑いが根強く残っている原因のひとつなのではないかと思います。


3、現在は鍼の効果はWHOにも認められ、海外で評価が高い


時代が変わり、近年ではむしろ欧米を中心に鍼灸の効果が見直されています。


世界保健機関(WHO)は、2003年に「鍼灸療法による疾患ごとの有効性評価」を発表。その中で、神経痛・頭痛・腰痛・頸部痛・吐き気・自律神経失調など、約41種類のさまざまな疾患に効果が期待できると公式に明記されました。


現在では日本や中国、台湾、韓国ではもちろん、アメリカ、オーストラリア、カナダなどで国家資格(公的資格)として鍼灸師制度が整備されており、日本よりも海外で研究・活用が進んでいる部分が多々あります。



鍼灸の効果を疑問視する声の中でよく挙げられるのが「科学的根拠がない」という批判です。


たしかに、かつては東洋医学の理論と現代医学の言語が一致しないため、研究が難しいとされていました。


しかし、近年はMRIや筋電図、脳波などの、さまざまな計測技術が発達したことで、鍼刺激が脳や神経、筋肉にどう影響するのかを測定する研究が進んでいます。


たとえば、

  • 鍼を刺すことで**脳内の鎮痛物質(エンドルフィン)**が分泌されやすくなる
  • 筋肉の硬結部分に鍼を打つと、筋緊張が緩和される現象が起こる
  • 自律神経にアプローチすることで、内臓機能や睡眠の質が改善される

など、命に関わる医療分野と比べると、まだまだ部分的ながら、科学的裏付けがある研究報告も、皆さんが思っているよりたくさん存在します。


下のリンクは鍼灸治療の効果について特集された番組や記事、医学論文です。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。


・NHKスペシャル「お灸、鍼、漢方薬…東洋医学がなぜ効くのか?」

・鍼治療が痛みの治療として主流にーアメリカ
・2010年から2020年における鍼治療による疼痛治療の研究動向:文献計量学的分析(英文)



ここまでお読みいただくと、「鍼灸治療ってすごいんだ!」と感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、もちろん、鍼灸治療は決して万能ではありません。


たしかに、当院の患者さんでも、劇的な効果が出た時はまるで魔法のように感じる方もおられますが、最近のSNSで見かける「バズりたい」がゆえと思われる「鍼灸で何でも治る」かのような発信は、逆に鍼灸治療の信用を低下させるのではないかと感じています。


基本的に、鍼灸治療では

  • 腫瘍そのものを消すことはできません
  • 骨折そのものを治すこともできません
  • 急性の感染症にも限界があります

※ただ、上記に付随した症状を緩和できることはあります。


つまり、鍼灸治療には得意分野と不得意分野があります。ですが、


  • 極力、薬に頼らずに症状を和らげたい
  • 慢性的な疲労や自律神経に関わる不調で悩んでいる
  • 痛みが長引いているが、病院でははっきりした原因が分からない

そんな方にとって、鍼灸は“体の中から不調を立て直すための選択肢”として非常に有効です。



もし今あなたが、何らかの不調が長引きお悩みであるなら、鍼灸治療をぜひ選択肢に入れてみてほしいと思います。


まずは、治療院のHPなどをしっかり見て、信頼できそうなら相談してみる。受診した際は、不安なことはすべて質問する。そして、治療を受けてみて少しでも体に変化を感じたら、頑張って通院してみる。


真摯に鍼灸治療を行なっている先生なら、きっとあなたの力になってくれます。


もちろん、神戸市垂水区近郊にお住まいで通院できる方なら、当院でもしっかり対応いたします。いつでもご相談ください。



今回は、「鍼灸は怪しい?本当に効くの?」というテーマに対して、歴史・科学・臨床の視点から、3つの国家資格をもつプロとしてざっくりお話ししました。


  • 鍼灸は日本でも古くから正当な医療として扱われてきた
  • 明治以降の制度的な流れで軽視された時代があった
  • 今や海外では高く評価され、科学的研究も進んでいる
  • 万能ではないが、自然治癒力を引き出す手段として有効

これら今回のお話しは、宣伝という意味ではなく、「本来の鍼灸治療の姿」として少しでも多くの方に知っていただきたい事実です。


「もしかしたら、自分の症状は鍼灸治療で楽になるかも知れない」


もし、そんな風に、希望をもって少しでも前向きになっていただけたなら、嬉しく思います。


これからも、正しく、誠意をもって、鍼灸や整体治療の魅力をお伝えしていきます。次回は「鍼灸治療や整体って何だか怪しい?その歴史や効果についてのお話(整体治療編)」を書いていきます。


よければ、ぜひそちらもご覧いただければと思います。



(監修:柔道整復師・はり師・きゅう師 岡田英士)